YAMATO KOISO MEDICAL CLINIC

循環器内科

弁膜症

■どんな病気?原因は?
心臓の4つの部屋の出入り口にある一方向弁(僧帽弁・三尖弁・大動脈弁・肺動脈弁)に不具合が起きる病気です。
弁の開きが悪くなると狭窄、うまく閉まらないと逆流(閉鎖不全)となり、いずれも心臓に負担をかけるため悪化すると心不全となります。
生まれつき(先天性)だったり、弁の変化、経年劣化だったり、細菌感染(急激に破壊される:感染性心内膜炎、慢性的に変化:リウマチ性弁膜症)が原因となります。

■症状は?
いずれもかなり重症にならないと症状は出てこないことが多いので、気づいた時には心臓のポンプ機能が悪くなってしまっていて良い治療ができなくなることも少なくありません。
弁によって異なりますが重症になると、うごくと息苦しい、胸が痛い、体がむくむなどの症状がでます。

■検査
まず聴診で心臓の雑音をみつけます。
心臓超音波(エコー)検査で詳しい診断と程度がわかります。

■治療
悪くなった弁は薬では治らないため、治療は手術またはカテーテル治療となります。
弁の狭窄または逆流が重症の方が適応となります。
心臓は日々動き続けているため弁膜症は時間とともに悪化していくことが多いですが、薬で血圧や脈を最適化したり負担を減らすことも重要です。
早期に診断し、心臓が悪くなる前に適切なタイミングで最適な治療を行うことがもっとも大切です。

狭心症・心筋梗塞

生活習慣病の適切な管理で予防が可能な数少ない心臓病です!

■どんな病気?原因は?
心臓の細胞を養う血管(冠動脈)が何らかの原因で狭くなり、狭くなった先の血管に養われる細胞(心筋細胞)たちが酸欠で苦しくなるのが狭心症です。
さらに、狭くなった冠動脈が血栓などで閉塞してしまい、その先の心筋細胞が死んでしまうのが心筋梗塞です。広い範囲で心筋が死んでしまうと致命的になります。
狭くなる原因は主に動脈硬化ですが、ほかに血管のけいれん収縮で起こる「異形狭心症」などがあります。
更年期前後の女性に多く、喫煙やストレスなどで安静時にも起こる「微小血管狭心症」は、まだ原因がはっきりしませんが女性ホルモンが関与していそうです。
動脈硬化の予防が狭心症・心筋梗塞の予防になるため、生活習慣の適切な管理で予防できる数少ない心臓病なのです!

■症状は?
典型的な狭心症の症状は、胸の奥が痛い、胸がしめつけられる・押さえつけられる感じなどですが、胃のあたりや背中・肩・腕の痛み、のどや歯の違和感などを感じることもあります。
また、痛みの程度は強いものから軽いものまでさまざまです。とくに糖尿病の患者さんは症状を軽く感じることが多く注意が必要です。
動脈硬化などで狭くなっている場合は、心臓がたくさん働かねばならないときに血液が十分供給されず酸欠になりやすいため、日中に運動したりした時に症状がおこりやすく「労作性狭心症」といいます。
一方でけいれん収縮で狭くなる「異形狭心症」は、夜間や朝方の安静時に症状がおきやすいです。
ただ狭窄が強くなると、安静時でも繰り返し狭心症症状がおきるようになり、「不安定狭心症」として急性心筋梗塞に準じた早急な治療が必要となります。
急性心筋梗塞では、前述の狭心症症状が20-30分以上続き、呼吸困難や吐き気、失神なども伴うことがあります。

■検査
心電図、負荷心電図、ホルター(24時間)心電図・・・
狭心症は無症状時は心電図に変化がないことが多いので症状があるときの検査が重要です。
(負荷)心筋シンチグラフィー検査・・・
放射性同位元素を注射して心臓の虚血(酸欠状態)を評価します。
心臓超音波検査・・・
心臓の動きの悪いところがないかなどをしらべます(冠動脈の評価は困難)。
冠動脈(心臓)CT検査・・・
造影剤を使った心臓CTで冠動脈の狭窄も評価できます。
冠動脈造影 カテーテル検査・・・
四肢の動脈からカテーテルを進めて冠動脈の狭窄・閉塞を細かく調べる最も重要な検査です。

■治療
①薬物治療
血栓でつまらないようにするための抗血小板薬(血をサラサラにする)、血管を拡張させる薬(硝酸薬やカルシウム拮抗薬)などを使います。
異形狭心症や微小血管狭心症の治療も血管拡張薬です。
動脈硬化が原因の場合は、原因となる高血圧、糖尿病、脂質異常症などの治療をしっかり同時におこないます。
カテーテル治療後や冠動脈バイパス術後にも抗血小板薬などの薬物療法が必要になることが多いです。
②カテーテル治療
経皮的冠動脈形成術(バルーン拡張術、ステント留置術など)主に動脈硬化によって狭くなった冠動脈(数㎜ほどの血管)を広げたり、詰まった血栓を吸引したりします。再狭窄が問題でしたが、薬をコーティングしたステント(金属製網状筒)などを用いて、抗血小板薬などの薬物治療をしっかりすることで改善しています。
③手術
冠動脈バイパス術・・・狭窄・閉塞した冠動脈の先(下流)に他の血管でバイパスを作成して血流を再開させる手術です。
カテーテル治療が好ましくない病変(狭窄・閉塞)や複数の血管に病変がある場合、糖尿病がありカテーテル治療より好ましいと判断される場合、ほかの治療すべき心臓大血管疾患がある場合などに選択されます。
他に、心筋梗塞後の心臓合併症に対する手術が必要な場合もあります。

②と③の選択は、患者さんの全身状態と病変からリスクと効果を循環器内科・心臓血管外科による「ハートチーム」で検討し、患者さんのご希望を合わせて最適と思われる治療を選ぶことが重要です。
急性心筋梗塞では、いかに早く詰まった冠動脈を再灌流させるかが予後を大きく左右するため、診断から治療までの時間を短くすることが非常に大切です。

不整脈

■どんな病気?原因は?
心臓は 自分で勝手に動いてくれます。心臓は「リズムをコントロールする部署」から出た収縮しろという命令(電気刺激)が決まった伝達通路を通って心臓全体に伝わることで4つの部屋が非常に効率的に動くようにできているのです。
例えば運動をすると体に酸素やエネルギーをたくさん送る必要があるので、「たくさん動け」という命令が出て脈が速くなるのです。
このリズムの命令伝達に異常がおこると不整脈となります。
不整脈には早くなる頻脈と遅くなる徐脈があります。頻脈は異常な命令が別のところから出たり、命令が余計に行ったり来たりすることなどでおきます。徐脈は命令を出す部署がこわれたり、伝達路が途絶えたりするとおこります。
原因は生まれつきの問題の場合もあれば、弁膜症や心筋梗塞などほかの心臓病からおこることもあります。
不整脈は一時的のこともあれば持続する場合もあり、命に係わる怖いものから様子を見ていてよいものまでいろいろあります。

■症状は?
頻脈性の不整脈の場合は「胸がドキドキする(動悸)」「息苦しい」「気持ち悪い」、徐脈の場合は「気が遠くなる」「気持ち悪い」といった症状がでます。いずれの場合も「脈が飛ぶ」と感じることがあります。
脈が速すぎても遅すぎても心臓のポンプ機能が落ち、からだは血流不足になりますので、血圧低下・失神の可能性があり、命に係わる場合もあります。この場合、専門病院で早急な治療が必要になります。
心房細動などで、心臓がうまく収縮しなくなると心臓のなかで血液のよどみができ血栓をつくります。これが飛ぶと脳梗塞などを起こします。

■検査
診察で脈の乱れを確認し、まずは心電図をとります。
診察時には不整脈が落ち着いていることも多いので、ホルター(24時間)心電図で不整脈をさがします。心臓超音波検査で心臓の機能や不整脈の原因、血栓の有無を確認します。
不整脈のタイプが分かれば、専門病院で詳しい検査(電気生理学検査、カテーテル検査)を行います。

■治療
【徐脈】 症状がある場合はペースメーカー植え込みが唯一の根本治療となります。

【頻脈】
①薬物治療
不整脈のタイプにより抗不整脈薬で抑えることが可能な場合があります。 また、血栓予防の抗凝固薬( DOAC、ワーファリン)を内服する場合があります。
②電気ショック(電気的除細動、AED)
不整脈が続き血圧が下がってしまう場合などに心臓をいったんリセットする電気ショックを行うことがあります。緊急時のAEDもその一つです。
③カテーテルアブレーション
頻脈性不整脈の原因となる部位や伝導路をカテーテルを用いて心臓の内側から焼灼して不整脈を治します。
④他のカテーテル治療・手術
慢性心房細動の場合、血栓のできやすい「左心耳」という部位をカテーテルで閉鎖したり、手術で閉鎖・切除したりすることがあります。
⑤植え込み型除細動器
致命的となる頻脈性心室性不整脈を起こした人に電気ショックがすぐできるように器械を植え込む治療です。ペースメーカーと一体となっているものもあります。
不整脈の種類を調べ、最適と思われる治療を選ぶことが重要です。

不整脈:心房細動

■どんな病気?原因は?
頻度の多い不整脈の一つで、加齢、高血圧、糖尿病、肥満、心臓病、睡眠時無呼吸症候群、喫煙、飲酒、ストレスなどが要因となります。
発作性(7日以内)、持続性、長期持続性(1年以上)、永続性に分類されそれぞれ治療方法が異なります。

■症状は?
心房からばらばらのリズムの命令がでることで、心房は不規則に震える状態になり、心室と脈拍はばらばらで速くなったり遅くなったりします。
症状は何も感じないこともあれば動悸、息切れ失神などをおこすこともあり、さまざまです。
不整脈のあいだは心臓のなかで血液のよどみができ血栓をつくりやすくなります。これが飛ぶと脳梗塞などを起こします。
長い間心房細動が続くと心臓のポンプ機能がおちたり、心臓が拡大して弁膜症が出現したりして心不全となることもあります。

■検査
診察で脈の乱れを確認し、まずは心電図をとります。
診察時には不整脈が落ち着いていることも多いので、ホルター(24時間)心電図で不整脈をさがします。
心臓超音波検査で心臓の機能や弁膜症、血栓の有無を確認します。

■治療
①薬物治療
場合によって抗不整脈薬で発症予防が可能です。発作性でも血栓を作る可能性があるため、抗凝固薬の内服を検討します。
②電気ショック(電気的除細動、AED)
心房細動で血圧が下がってしまっている場合に緊急で行い一旦リセットする治療です。
③カテーテルアブレーション・手術
根本治療として心臓の壁を焼灼して余計な命令の伝導を遮断して治す方法です。他の心臓病がある場合には手術で行うこともあります。
④左心耳閉鎖手術
永続的心房細動の場合、血栓のできやすい「左心耳」という部位をカテーテルで閉鎖したり、手術で閉鎖・切除したりする治療があります。
⑤ペースメーカー植え込み
永続的心房細動で徐脈となってしまう場合はペースメーカーを植え込みます。

先天性心疾患

■どんな病気?原因は?
生まれながらにして心臓や大動脈に異常がある病気の総称でさまざまな病気があります。弁膜症や冠動脈の異常や不整脈などもあります。
決して珍しくはなく、生まれる赤ちゃんの100人に一人くらいといわれています。
最近は出生時・乳児期の診察で診断されることが多いですが、生まれてすぐ症状があり治療が必要なものから、大人になるまで症状がなく診断がつかないものまであります。
原因は不明な点も多いですが、遺伝の要素もあります。

■症状は?
心臓のどこにどんな異常があるかで症状も症状が出る時期も全く異なります。
例えば左心房と右心房の間の壁に穴が開いている心房中隔欠損症という病気では、ゆっくり心臓のバランスが崩れていき、大人になって初めて不整脈や心不全の症状(うごくと息切れがするなど)が出てくる人が多いです。
しかし、そうなってからの治療では心臓のポンプ機能の障害や不整脈が残ってしまうことが多いのです。
冠動脈の先天的な異常があり、狭心症の症状で大人になって気づかれることもあります。

■検査
○聴診をはじめとした診察がまず重要です。 ○心電図やレントゲンで異常に気付くこともあります。 ○心臓超音波検査で診断がつくものが多いです。 ○心臓CT・MRI検査も診断に有用です。

■治療
病気によって異なりますが、薬での治療はできず、手術かカテーテル治療が必要になるものがほとんどです。
手術をして成人になっても、定期的なチェックが必要な病気が多く、再治療が必要になることも少なくありません。 しっかり診断すること、治療をして大人になっても、必要な場合は定期的にチェックをして
適切な時期に適切な治療を行うことが重要です。

心不全

■どんな病気?原因は?
「心不全」は病名ではなく、心臓のさまざまな病気(心筋梗塞、弁膜症、不整脈、先天性心疾患、心筋症、心筋炎など)や高血圧、肺高血圧などによって、心臓の負担がつのり、最終的にポンプ機能が低下して、からだに血液を十分に送り出せなくなった状態をいいます。
心臓は形を変えたり(拡大や肥大)して、無理やりからだに血液を送り出そうと頑張ります。このあいだは症状が出にくいのです。
しかしこうした状態が続くと、いつか心臓は疲れてバテてしまいます。このときに症状が出はじめるのです。

■症状は?
血液は からだ ➡ 右心房・右心室 ➡ 肺 ➡ 左心房・左心室 ➡ からだ と流れます。
心臓のポンプ機能が低下すると、血液がうっ滞します。
左心房・左心室が悪くなる「左心不全」では、肺に血液がうっ滞して、動くと苦しいといった症状(労作時息切れ)が現れます。また、たとえば腎臓への血流がへることで尿がへったりします。
右心房・右心室が悪くなる「右心不全」では、からだに血液がうっ滞して、むくみ(浮腫)や肝臓などの臓器のうっ血による障害を引き起こします。
急にわるくなるものを「急性心不全」といい、ゆっくりと悪くなっていったものを「慢性心不全」といいます。

■検査
○血液検査、レントゲン、心電図 ○心臓超音波検査 ○心臓CT・MRI検査 ○心臓カテーテル検査、心筋生検などで状態と原因を調べます。

■治療
①薬物治療
原因となる心臓疾患によって治療は異なります。心臓の収縮力が弱っている心不全には効果が期待できるいくつかの薬があります。
一方、拡張ができないことでおきる心不全には有効な薬が少ないのが現状です。
急性心不全や急性憎悪した慢性心不全では入院での治療が必要となります。
②手術
心不全の原因によって例えば弁膜症や冠動脈の手術などが適応になる場合があります。
他にペースメーカーを使った心臓同期療法や、重症心不全に対して心臓移植や補助人工心臓が適応となる場合があります。
③緩和ケア
末期心不全には症状を緩和する緩和ケアも行います。
心疾患を見逃さず、心不全の早期に適切な治療を開始することが何よりも重要です。

大動脈疾患・血管疾患

■大動脈瘤
心臓から出て体の中心を通る太い動脈(2-3㎝)を大動脈といい、これが太くなる病気を大動脈瘤といいます。
原因は動脈硬化、高血圧が最も多く、ほかに先天性要因や感染などがあります。
心臓に近い順から上行-弓部-胸部下行-胸腹部-腹部とわかれます。あるサイズを超えて大きくなると破裂や解離(下記)をおこし致命的となる可能性が高まるため、治療が勧められます。
薬では治せず、治療は手術:人工血管置換かステントグラフト内挿(カテーテル治療)となります。
破裂や解離を起こすと強い持続する痛みが出ますが、普段は症状はほぼありません。なので早期発見が大切です。
レントゲンやエコーで疑い、CT検査で診断をつけます。
次第に拡大していくことが多いため、定期的な経過観察が必要です。

■大動脈解離
大動脈は太い血管なので壁が厚いのですが、完全に破けると破裂、外側が残って内側で縦に裂けることを大動脈解離といいます。
突然発症し致命的となることが多い病気です。
裂ける場所や程度によって症状が異なりますが、突然の強い胸痛、背部痛が続きます。
緊急治療(手術または保存治療)が必要となりますので救急車を呼びましょう。慢性期には大動脈瘤と同じように経過観察が必要です。

■動脈疾患
動脈硬化は全身の動脈でおこります。動脈硬化が進むと動脈の内壁にプラークがたまっていき狭窄、閉塞をおこします。
脳に行く頸動脈が狭窄すると脳梗塞の原因となります。
また、下肢の動脈が狭窄すると慢性閉塞性動脈硬化症といって足の血流不足で歩くと足が痛くなったり、足がしびれたりします。放置すると悪化し極端な場合は切断が必要になるため治療が必要です。
薬物療法のほか、狭窄した動脈を広げる手術、カテーテル治療があります。同時に生活改善も必須です。
他に喫煙や遺伝が原因となる足の動脈疾患などもあります。
動脈硬化だけが原因ではありませんが、からだの中の臓器につながる動脈も狭窄や瘤化、解離をおこします。
症状はそれぞれですが、ないことも多いです。

■静脈疾患
静脈は体の隅々に行った血液が心臓に帰るための血管ですが、動脈と違ってポンプで押し出されないため、特に下半身はうっ滞しやすくなります。
うっ滞がひどくなるとそこで血栓ができやすくなり(深部静脈血栓症)、血栓が肺に飛んで肺塞栓という重篤な病気になる可能性があります。(「エコノミークラス症候群」)
また、下肢の静脈が逆流したりすると表面の静脈がふくらんで静脈瘤ができたり、むくみが強くなります。
足のむくみは心臓や腎臓、静脈・リンパなど様々な要因でおこりますが、原因を調べ適切な対処をすることが重要です。